2007年/日本/108分/監督・園子温/栗山千明/大杉漣/78点
解説
ヘアー・エクステンション(=エクステ)に乗り移った少女の怨念が引き起こす恐怖を描いた異色ホラー。ある日、横浜港に到着した巨大コンテナから膨大な量の髪の毛に埋もれた少女の遺体が発見される。その直後、美容師の卵・優子が働く美容室の周囲で次々と不可解な出来事が起こり始める。やがて優子の元に、エクステを売り歩く山崎という男が現れ……。主演は「キル・ビル」の栗山千明。また髪フェチ男・山崎を実力派俳優の大杉漣が怪演。
ー映画.comよりー
まだ暑いのでホラーを…と思い、『輪廻』と迷ったんですがこちらの方が見たことない人が多そうだな…ということで『エクステ』紹介です。
2007年の作品で監督が何気に園子温。
大杉漣さんも出演されてます。
ちょい役で満島ひかりも。
私は結構好きなので高得点つけてますが、正直「ホラー映画を観て涼しくなりたい」「ホラー映画は怖くてなんぼ」という人にはお勧めできません。
「怖いのはちょっと苦手」「ホラー映画を観てツッこみながら笑いたい」という人にお勧め。
軽い気持ちで観てほしい。
あとは伊藤潤二のホラー漫画が好きな人にもお勧めできそうです。こういう髪の毛の呪いの発動、伊藤潤二の漫画の中にあったあった。
今回はポスターとあらすじでもう展開がわかりまくると思うので、ネタバレありで記事を書いていきます。
ざっくり感想
まさに爆髪
大杉漣さんの「ヘア~♪ヘア~♪」
髪が、髪があぁ!!!
虐待ダメ
傷跡から目玉から、舌からも髪の毛が「こんにちは」
とある夜、巨大コンテナを開けた警備員はコンテナいっぱいにみっしりと詰まった人毛を発見。不気味さに慄いていると人毛の中から髪を剃られ体に大きな傷跡がある少女の遺体が浮かびだし警察に通報します。
少女の遺体を見た警察は、おそらく臓器売買で髪を剃られ臓器を摘出された被害者だろうと推察。
身元もわからず、遺体はそのまま安置所に収められます。
少女が運び込まれた遺体安置所では、髪フェチの変態・山崎が働いていたのですが、この男、以前から運び込まれた女性の遺体の髪をチェックし、染めた髪、傷んだ髪には激しくダメ出しをし、遺体の乗せられたストレッチャーを蹴るなど好き放題していました。
山崎が少女の遺体をチェックすると、なんと大きく裂かれたお腹の傷跡から髪の毛がわさわさと生え出します。
驚いて顔を見ると、舌からも、片方つぶれた目玉からも髪の毛が。
そして剃られた髪の毛も急激に伸び始めます。
その髪の美しさに「美しい!君は最高だ!!」と感動する山崎。
大喜びで遺体を自宅に持ち帰りますが、部屋には美しい人毛が無数に飾られ、ロングウイッグを自ら被り「ヘア~ヘア~マイヘア~♪」と歌い踊るなどどうみても頭がおかしい山崎。
部屋に設置されたハンモックに寝かされた少女は、絶えず髪の毛を伸ばし続けていきます…。
ヒロイン・優子は美容室で働く美容師の卵。ダンサー志望の友人・由紀と2人暮らしをしていますが、ある日突然、姉の子ども・マミを強制的に預けられます。
異様にビクビクとし顔色を大人の顔色をうかがうマミの体には傷跡が。
姉に電話し問いただすも聞き流され、しばらくマミと暮らすことに。
怯えて遠慮しがちなマミとなかなか打ち解けられない優子でしたが、少しずつ距離が近づいていきます。同居人の由紀も優しくマミを受け入れます。
そんな中、優子の部屋にあるマネキンヘッドに興味を持ったマミはついハサミを入れてしまい、収取がつかないボロボロヘアーにしてしまいます。さらに慌ててしまい、他のマネキンヘッドも倒してしまい部屋の中もぐちゃぐちゃに。
泣きながら優子が勤める美容室へ向かうマミ。
その姿を見かけた山崎は「(髪が)美しい…!」とロックオン。
子ども番組で工作するオジサンのような服を着て怪しさ満載ですが、マミに声をかけ美容室へ送り届けます。
そこで更に優子の美しい黒髪に感動し、2人まとめてロックオン。
やばいのに目をつけられてしまいました。
マネキンヘッドと部屋をボロボロにされ、さすがにちょっと怒った優子でしたがちゃんと反省しているマミを許し仲直り。
優子も幼い頃に姉に虐待されていたようで、心に傷を負った2人は寄り添います。
そんな中、山崎が再度優子の働く美容室に現れ、「実はエクステを販売しています。無料サンプルをお渡しするので試してください」と、コンテナの少女の髪から作ったエクステを美容室へ献上。質の良さにスタッフも大喜び。
優子へ辛くあたっていた女性スタッフがさっそくそのエクステを着け上機嫌で帰宅しますが、目玉から髪の毛がみょーんと伸びたり、指先の切り傷からも髪がわさわさ生えたり異常事態が発生。更ににゅるにゅると急激に伸びた毛髪が天井まで伸びて大変なことになり絶命します。
また別の美容室でもエクステサンプルを着けた美容師が耳からエクステに侵入されてしまい、突如身に覚えのない少女の臓器摘出のおぞましい記憶が脳内に再生され衝動に抗えず客を殺害した後に自殺してしまいます。
優子に懐くマミは自分を虐待し優子の服やアクセサリーを勝手に持ち出す母親を拒もうとしていましたが、ある日「ごめんねママが悪かった。マミちゃんのお顔を見てごめんなさい言いたいな…」と優子や由紀の不在時にやってきた母親の演技に騙され家の鍵を開けてしまいます。
母親は当然反省しておらず「(開けるのが)おせーんだよ!」とマミを叩き、金目になりそうな優子の服やアクセサリーをカバンに詰め、マミを連れて家に帰ります。
家にはいかにもヒモっぽい男がいてマミは押入れに閉じ込められますが、戦利品である妹の私物をぶちまけた際に、一緒にバックに入れてしまっていたエクステを踏みつけてしまい、男とイチャイチャしている間に爆髪した髪の毛に襲われて母と男は絶命。
マミは逃げようとしますが玄関は髪の毛で塞がれているため、アパートの窓から飛び降ります。
怪我はしたものの一命をとりとめたマミは再び優子の部屋に戻り、優子は改めてマミに「一緒に暮らそう。一緒にいよう」と約束します。
とはいえ「髪の毛のお化けにママは殺された」とさすがにしょんぼりしているマミ。
そんなマミを元気づけようと、優子は美容室で行われる従業員のコンテストのパートナーにマミを選び、可愛く髪の毛をカットしてあげます。エクステもつけてあげます。
笑顔になったマミですが、美容室に「こちらに勤めている女性が変死体で発見された」と刑事が現れ…。
怪奇! とぐろ巻く髪の毛の洪水!
という見出しでホラー番組が作れそうな勢いで髪は伸びたり動いたり刺さったり巻き付いたり体内に侵入したりと爆髪しまくります。
美容室を訪れた刑事はコンテナの少女の事件も担当しており、事情聴取の中でエクステサンプルを持ち込んだ山崎という男がいたことを知り、遺体安置所で顔を合わせた山崎との関連に気づきます。
一方、エクステをつけた人たちが変死をしているという事実を刑事から聞かされた優子は自らがマミに着けたエクステを思い出し、急いで家に帰ります。
しかし家では既に爆髪中。
由紀は絶命し、マミは髪の毛に巻き付かれぐったりしています。
マミを助けようとするも怨念こもった髪の洪水に負け、増殖し続ける髪の毛に埋もれて優子も気を失ってしまいます…。
優子が目を覚ますと、そこは山崎の家。
人毛ウィッグを被せたヘアマネキンが多量に飾ってあるわ家全体が人毛に埋め尽くされつつあるわで驚愕します。
また、山崎に目星をつけやってきていた刑事2人も拘束され、1人は絶命。
山崎は生きたまま麻酔もかけられず髪を剃られ臓器を摘出されたコンテナの少女の無念や怨念を語りますが、どうにか逃げないと!と必死な優子は一緒に拉致されていたマミに手を出されないよう「この変態!この髪が欲しいんだろ?」と山崎を挑発。
「変態って言うな!」とまんまと挑発にのり優子に襲い掛かる山崎ですが、コンテナの少女に標的にされ(自分を襲った臓器売買組織の男とおなじと思った…?)、髪の毛にダルマ落としのダルマのように体をスパスパ切断されてしまいます…が髪の毛フェチなので嬉しそうです。
山崎を殺した少女は伸び続けた髪の毛も元に戻り(坊主頭ではなく剃られる前の長さ)、潰されていた目も元に戻り安らかな表情になり成仏した様子。
生き残った優子とマミも支え合い強く生きていくことでしょう…。
という、髪の毛の爆髪と大杉漣さんの怪演が際立つ映画でした。
あとはホラー描写は漫画的なのに母親の虐待が妙にリアリティがあるというか時間にすると短く、激しい暴力描写がある訳ではないけどやり取りを見ていて地味にしんどくなるのとか園子温監督だなと。
笑った後でよくよく考えるとどこの誰かわからない人毛エクステに怨念がこもっていたら確かに怖いし、病的な髪の毛フェチも実在はしているだろうなとも思うので、旅行者が旅先の試着室から忽然と姿を消して人身売買されるみたいな、ピアス穴を開けたら糸が出てきて引っ張ったら失明したみたいな、都市伝説的な怖さもあるといえるかもしれません。
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