レディー・ガガ単独ポスターもたくさん貼られているし、公式も明らかにガガ推しではあるのですが、ブラッドリー・クーパーなくしても語れない作品だと思いました。
「アリー/スター誕生」或いは「ジャック/スターの終焉」
これは2人のスターの物語。
2018年/アメリカ/136分/レディー・ガガ/フラッドリー・クーパー/80点
あらすじ
昼はウエイトレスとして働き、夜はバーで歌っているアリー(レディー・ガガ)は、歌手になる夢を抱きながらも自分に自信が持てなかった。
ある日、ひょんなことから出会った世界的シンガーのジャクソン(ブラッドリー・クーパー)から歌を高く評価される。アリーは彼に導かれてスター歌手への階段を上り始め、やがて二人は愛し合うようになるが、ピークを過ぎたジャクソンは、徐々に歌う力を失っていく。
ーシネマトゥディよりー
ガガの歌、クーパーの演技、
ガガ×クーパー=化学反応的な最強のデュエット素晴らしい
しかしデュエット=「shallow」が素晴らしすぎて早すぎたクライマックス感があり、自分がアリー(ガガ)よりもジャック(クーパー)に感情移入しすぎて映画の後半とラストは悲しみが感動を上回りしょんぼりしてしまいました。
3回目のリメイクとなる「スタァ誕生」という作品そのものがヒロインありきで、今回も様式美として正しく踏襲しているからこそ特に本国アメリカで大ヒットしているのだとは思うんですががが。
ラスト、ああなるからこそジャックはある意味スター的で格好良いとも思うのですががががが。
ガガの歌があってこその映画、感動ではありますが自然とクーパーをメインに置いて鑑賞していました。
特にブラッドリークーパーが推し俳優という訳ではないんですが、今作でクーパー演じるジャックがすごく良かった!かっこよくて弱くてどうしようもなかった!
そう、私はすっかりジャクソン推し!
そんな感想になります。
以下、ネタバレなし感想
「アリー×ジャックの出会いと蜜月」「ソロもデュエットも、ライブはいいぞ!」
既に世界的シンガーであったジャックが、ライブ後にたまたま立ち寄ったバーでたまたま「ラヴィアンローズ」を歌っていたアリーの才能を見抜き、惹かれ合い…という流れなのですが、映画の冒頭はアリーではなくジャックのソロライブです。
実際にクーパーが歌っているんですが、大観衆を前に堂々とした歌いっぷりでガガの歌を聴く前から既に作品の音楽に引き込まれます。
酒とステロイドのコンボをグイッと決めてからステージに上がるジャック。
酒ヤケしてるかのようなでもセクシーな低音ボイスのジャック。
髭面で適当に伸びたっぽい髪をかき上げギターをかき鳴らすジャック。
からのギターソロの自然な手つき。
「もうそんな時代じゃない。昔のやり方はもう消えるんだ」
そしてライブ後にジャックがフラリと訪れたバーで、ドラァグクイーン達に歌を認められシンガーとして舞台に立ち「ラヴィアンローズ」をパフォーマンスするアリー。大喝采な客。
栄光に疲れ酒に溺れ行きついた先のバーで才能に溢れながらも燻る女性が歌う「ラヴィアンローズ(バラ色の人生)」…
ジャックは彼女の才能を見抜き、戸惑うアリーに閉店後に2人で飲みに行こうと誘いをかけます。
「もう一度君を見たかったんだ」
侮蔑の言葉をかけてきた男とアリーが一悶着あり、アリーは手を怪我してしまうんですが、ジャックは立ち寄ったスーパーで豆?の冷凍食品を購入し深夜の駐車場でアリーの手に当て、一緒に購入したテープでグルグル巻きにして手当します。
めちゃくちゃ不格好でキュンキュンします。
世界的シンガーで大観衆の前であんなに格好よく堂々歌う男が、気になる子の手に冷凍食品をグルグル巻き。
手当を受け、「これまでオリジナル曲を書いてレコード会社に持ち込みもしたけど鼻が大きいからと落とされたの」などポツポツ話をしながらアリーは自作の歌をジャックに聴かせます。
すっかりアリーを気に入ったジャックは自分のライブへアリーを招待。
車でアリーを自宅に送り、「仕事だから行けない」と家に戻ろうとするアリーをジャックは引き止めます。
「何?」と振り向くアリーに「もう一度君を見たかったんだ」とほほ笑むジャック。
アリーはおどけて、コンプレックスである大きな鼻を指でスーッとなぞり自宅に戻ります。
宣言通りにアリーは仕事へ行くのですが、かねてから自分にキツくあたっていた上司に嫌気がさし、仕事を辞めてライブへ向かうのですが…。
早すぎるクライマックス~アリー×ジャックの「shallow」~
ライブ中、なんとジャックは「君の曲をアレンジしたんだ」とアリーをステージに呼びます。「無理だわ」と言いながらも何だかんだステージ上がりジャックとデュエットするアリー。劇場予告で見た場面。予想以上にアリーの第一声から引き込まれます歌うまいというか凄い!
そしてジャックとのデュエットパートがまた鳥肌ものです。
バーで数十人の前でしか歌ったことがなかったのにいきなり大観衆の前で歌声響かせるアリーも凄いしサラリを聴いただけのアリーの曲にアレンジ加えてぶっつけで自身のライブで披露させるジャックも凄い。
まだ映画の半分もきてないんですがここが一番の盛り上がりでした。
あとはトントン拍子にアリーがスターダムをのし上がりジャックがコロコロ転落していきます。
まさにスター誕生なアリーも色々あったと思うんですが、監督も務めたクーパーはたぶん敢えてそこには触れず「アリーとジャクソンの物語」に焦点を当てていたのかな…。
ジャックの転落ぶりに震える
ジャックのライブに同行しソロ曲も歌っていたアリーは大手レコード会社と契約し、有能なマネージャーもつきます。
ピアノと歌のみで勝負していたアリーは「歌いながらダンスもしろ」などと言うマネージャーに「私は歌で勝負したい」と反発していましたが徐々に受け入れ、ポップ歌手へ転身していきます。
髪がオレンジになったり眉の形が変わったり衣装も露出が多く派手なものになったり、綺麗に着飾った大きなポスターをドドンと広告で貼られたりするアリー。
ジャックはもともと片耳が不自由でこの先の音楽活動が危うかったり人気のピークは過ぎてたり身の回りの雑用をこなす年の離れた異母兄と折り合いが悪かったりアル中であったり薬にも手を出したり不安要素しかない状態だったのですが、変わっていくアリーについていけずキツく当たってしまったりとすれ違うように。
早い段階=アリーが大手レコード会社と契約するとジャックに告げた時、ジャックは何故か笑いながらパンケーキをアリーの顔にグチャア、と押し付けたりするんですが、恋人の成功は嬉しいんだけど素直に喜びきれないという葛藤や嫉妬や色んな感情がない交ぜになっていると思うんですね。
そしてその後もアリーの成功に反比例して、難聴が進み思うように演奏できなくなったり若手のバック演奏で呼ばれたり落ちぶれていく自分。
辛い…気分はすっかりジャックです。アリーが遠い…。
冒頭で「もうそんな時代じゃない。昔のやり方はもう消えるんだ」と歌いながらも変われないジャックと変わっていくアリー。
お互いけして嫌いになった訳ではなく愛情はもっていたのにどんどんすれ違っていくのが悲し切ない。
以下、ネタバレあり感想
何気にイイ味・ボビーさん
アリーには有名人好きなタクシー運転手の父親がいてちょこちょこ絡んだりするんですが、過去には「いつも作曲につきあってくれた」という娘の成功を願うお父さんです。
ジャックの家庭環境は複雑で、父親はいい年をして若い娘に手を出し子ども(ジャック)ができたりおそらく家族に暴力をふるってたりでもそんな父に酒と音楽の影響を受け屈折した愛情をもってます。
ジャックの身のまわりを世話するボビーというスタッフがいるんですが、物語の中盤でボビーがジャックの年の離れた異母兄?だと判明します。
ボビーはわかりやすく父親を憎んでいて、かつ自分自身も音楽の道を志していたのに弟ジャックのサポート?為に諦めざるを得なかったみたいな確執があるようで兄弟仲はギスギスしています。
アリーがスターダムにのし上がりグラミー賞の新人賞にノミネートされ、ジャックも授賞式にアリーと共に出席しますが、見事新人賞を受賞したアリーの傍らで、酔いつぶれた状態だったジャックは粗相をしてアリーの周辺から顰蹙をかいます。
そしてアルコール依存症の治療施設に入り、アリーもジャックを責めることなく寄り添いますが、お互いを大切に思うのに何故か2人の言葉は噛み合いません。
治療の甲斐ありジャックは自宅に戻りますが、車で送ってくれるのが兄・ボビーです。
そこでちょっとだけ謝罪と和解というか「親父のことで争って(兄貴に)才能がないと言ったが、俺が崇めていたのは兄貴だ」とジャックが兄のことを認める発言をし、返事は待たずに家に入っていくのですがそれを見送るボビーの目に涙が溜まっていて…。
アリー×ジャックの「shallow」に次ぐ名シーンでした。
蟻地獄に吸い込まれていくかのようなラストシーンへの流れ
ジャックは久しぶりに新曲を作り、一見快方へ向かっているようにも見えます。
アリーはジャックを見捨てず、彼をひとり家に置いていけないと「ツアーはキャンセルになった、アルバムが売れたから勢いのあるうちにもう1枚作ることになったの」と嘘をつきジャックに寄り添おうとします。が、ジャックはその嘘におそらく気づいていて。
またアリーのマネージャーがアリーの不在時に訪れ「お前はアリーの邪魔だ。授賞式の失態のフォローがどれだけ大変だったか。どうせ今飲んでる水だってそのち酒に変わるんだ」など追い打ちをかけます。
アリーはジャックに「ライブに来て。2人で「shallow」歌えばファンも大喝采よ」とかつて自分がジャクソンに手を差し伸べられたようにジャックを立ち直らせようとし、ジジャックも「わかったよ」と言うのですが…。
ライブへ向かう為、背を向けて部屋を出ようとするアリーをジャックは呼び止めます。
「何?」と振り向くアリーに「もう一度君を見たかったんだ」とほほ笑むジャック。
アリーはおどけて、コンプレックスだと言っていた大きな鼻を指でスーッとなぞり部屋を出ていきます。
序盤から「そうなるんだろうな」という予感はありましたが、この辺りはもう確実に「ジャックは死ぬな」「間違いなく死ぬな」という空気が満ち満ちていて、その予感通りにアリーが家を出た後、ジャックは愛犬に肉を与え、酒を飲み、かつて話した幼い頃の思い出話に出てきた方法で死を選んでしまいます。
うわぁぁぁんジャックーーーーーー!!!!!!
わかってたけど、わかってたけど…。
ボビーは当然ショックを受けたアリーに「君は悪くない、悪いとしたらジャックだ」「あいつは君の才能に惚れ込んでた、最高の伴侶だと」 と言葉をかけてくれます。
しかし才能に惚れ込んでいたからこその悲しい結果かもしれないと思うとやるせない。
そして迎えたラストシーン
ジャックの追悼コンサート。
大観衆の前、アリーは一人、ジャクソンが最後に作った曲を歌います。
ここで初めて回想シーン。
治療施設を出て自宅に戻り、ピアノの前に2人。
ジャクソンの歌とピアノに耳を傾けた最後の幸せな時間…。
アリーは一人、ジャクソンが残した曲を歌いあげます。
ストーリーに絶妙に絡まる音楽
主演のガガが印象の強い歌手なので観る前は「歌が良いことに間違いはないんだろうけど映画としてはどうなるのかな?」と思ってたんですが、歌のうまさはもちろん、ちゃんと「アリー」と「ジャック」として歌っていて心情にシンクロしストーリーを盛り上げていたのが本当にすごい。
ミュージカルではないのでストーリーに直接沿った歌詞ではないんですが、その時々のアリーとジャックが魂を込めて曲を作り歌いあげたようですごい相乗効果でした。
という訳で、歌に感動しつつも悲しみが勝り後半ちょっとしんどくなりながら観ていたんですが、アリーはなんだかんだジャックの死を乗り越えさらに糧にして歌手としての凄みを増していきそうです。
強いアリーも弱いジャックも、人間くさくもとてもスターらしかった。
気になってる方は映画館の音響で是非観てほしいと思いました。