2021年10月分はこちら↓
年齢とともに、映画を観たり本を読んだりする時に何となく先の展開が読めるようになったりするじゃないですか。
それでもその昔「シックスセンス」を初めて観た時は違和感を覚えながらも引っかかったし今はネタ扱いされてる貞子だってネタバレなしで「リング」を観た時はまさかTVから這い出てくるとは思ってなかったので驚いたものでした懐かしい。
11月は久々に、予想を超えられたり裏切られたりした作品がありました。
映画を観て「やられた!」って思うの楽しい!
という訳で
2021年11月面白かった映画5選
マリグナント 狂暴な悪夢
2021年製作/111分/R18+/アメリカ/
あらすじ
DV夫を何者かにより殺されたマディソンはある日を境に殺人現場を目の前で目撃する夢を見るようになる。
その夢は次々と現実となりマディソンは自ら封印した過去と向き合うようになっていく…。
冒頭から「みんなぁ!ホラー映画が!!はっじまっるよー!!!」と高らかに宣言するかのようないかにもな音楽とノイズと理不尽な殺人シーンから始まりジェームズ・ワン監督のやる気を感じます。
個人的にジワジワ精神にくるホラーには弱いけどガンガン攻めてくるアグレッシブなホラーには「よっしゃかかってこい!」と迎え撃つ姿勢になります。
そしてこの映画、冒頭からこれから起こる惨劇の元凶は〇〇だとバラしてしまってます。
なのである程度は「アレがこうなってそうなってああなっていくんだろうな」という予想も立ち実際その予想通りに話も進んでいくのですが終盤、ちょっと予想外な展開になり良い意味で「えええぇぇぇぇえええ?」と驚かされました予想を超えてきた。
いかにもな序盤から予想通りの流れで油断していたら終盤がやりすぎレッツパーリィ(褒めてます)
ネタバレなし、前情報なしで観た方が楽しいです。
R18の割には、R18の割にはそこまでグロくなく、マディソンの妹が可愛かったり姉妹愛にほっこりしたり刑事がイケメンだったりその刑事に恋してるらしきちょっとヤバげな鑑識の女の子もいたりキャラも良い感じ。
レッツパーリィをどう受け止めるかによって評価が分かれそうですが私は好きでした。
アンテベラム
2020年製作/106分/G/アメリカ
あらすじ
南北戦争時代と思われるアメリカ南部のプランテーション(大農園)で過酷な労働を強いられているエデン。銃を持った白人に監視され仲間と言葉を交わすことも許されず脱走に失敗した者は無残に殺され彼らの意に沿わなければ消極炉で焼かれて殺される。
一方、博士号を持つ社会人学者であるヴェロニカは名声を手にし優しい夫と愛らしい娘と幸せな家庭を築いているが日常生活の中に潜む黒人差別は変わらずにある。
ある日ヴェロニカは何者かに誘拐され…。
「ゲット・アウト」がすごく面白くて「アス」も面白かったのでこの作品も楽しみにしていたのですが、「そうきたか!」と良い意味で予想を裏切られました。
ある瞬間に各所に散りばめられた違和感が紐づき、裏切りに気付いた時に初めてこの映画が描いていた真の恐ろしさを知り「うわぁ…」とドン引くとともに作中の「過去は死なない。過ぎ去りさえしない」という台詞の重さに震える。
リトル・ガール
2020年製作/85分/G/フランス
あらすじ
男の子の体で生まれた、女の子のサシャ。
母親は周囲から「(サシャがああなのは)母親のあなたが妊娠している時に「女の子がほしい」と強く願ったからでは?」等責められ自身も母親である自分に問題があったのでは…?と思い悩んだと語る。
両親はサシャが自分らしく生きられるよう学校に「女の子として好きな服を着て通えるようにしてほしい」と対話をしようとするがまともに取り合ってもらえない…。
ドキュメンタリー映画。
学校や周囲の心無い言葉や対応に驚き観終わった後フランスのトランスジェンダーについて調べたら「トランスジェンダーが精神障害から外されたのは2010年」「トランスジェンダーに対する差別が年々増加」とありました。
フランスは同性愛や年の差恋愛に対して寛容なイメージだけどトランスジェンダーに関しては世間の目は厳しいようです。
自分の為に周囲に責められる母親を見て心配をかけまいとするサシャは専門医にも悩みを話そうとせず曖昧に微笑むことが多いんですが、耐えきれず顔をくしゃくしゃにして泣いてしまう場面があり心臓がきゅっとしました。
小難しいことは置いておいて、心と体の性別の違いを理由に好きな服を着て学校に通えないっておかしいよなぁ。
劇場版 きのう何食べた?
2021年製作/120分/G/日本
あらすじ
雇われ弁護士の史朗(シロさん)とその恋人の美容師の賢二(ケンジ)
史朗の提案でケンジの誕生日祝いで京都旅行に行くことになる。
あまりに幸せな誕生日に「もしかして別れ話をされるのでは」「シロさん実は大病を患っているのでは」と不安になる賢二に、史朗は正月の里帰りについて切り出し…。
大前提で出てくる料理が全部おいしそう。
「相手のこういうところが好きなんだろうなぁ」と伝わってくるシーンが多くてほっこりしました。
基本的に優しい世界なんだけどきちんと「二人を祝福して受け入れようと頭では理解しているのに心と体が追い付かない母親」「家族じゃないからすんなり受け入れられるけど自分の娘が同性の恋人を連れてきたら戸惑うと正直に話すご近所さん」「ゆるやかな老化」など、今もこれから先の未来も色々とあるんだろうけどこの2人なら共白髪になるまで添い遂げそうだな、添い遂げてほしいなと思えて余韻も優しかった。お似合いの2人でした。
スピッツの主題歌、歌詞の「君の大好きなものなら僕もたぶん明日には好き」もピッタリでした。
皮膚を売った男
2020年製作/104分/G/チュニジア・フランス・ベルギー・スウェーデン・ドイツ・カタール・サウジアラビア合作
あらすじ
シリアの列車の中で彼女にプロポーズしOKをもらったサムがテンション爆上がりして「みんな聞いてくれ!これは革命だ!自由だ!」と乗客を巻き込み歌え踊れで盛り上がった結果→自由への革命を求めた国家反逆罪とみなされ拘留され国外逃亡
みたいな気の毒な始まり方。
サムはどうにか国外へ脱出し貧乏生活を送り、国に残った彼女・アビールはお金持ちと望まぬ結婚をしベルギーに移住。サムはどうにか彼女に会おうとするがパスポートもなく途方にくれる。
そんなサムに新進気鋭の芸術家・ジェフリーは「君の背中にビザ(入国許可)のタトゥーを施し芸術作品にすればアート作品として色んな国に行けるし大金も手に入るよ!どう?」と持ちかけて…というストーリー。
シリア難民という重い問題を絡めつつも「自らがアート作品となった男の数奇な物語」として重くなりすぎないように撮ったのかな?と思うくらい設定の割にはライトで映像の美しさが印象に残る作品でした。
アンハッピーエンドではないんですがラスト近くのテロリスト絡みの映像が「それって実際やったら大変なことになるのでは」と喉に引っかかった魚の小骨のように気になり続けている。
フィクションですが実際に男性の背中にタトゥーを入れた「TIM」という作品があり、アートを施されたティムさんは年に数回、展覧会でその背中を展示し死後はタトゥーが彫られた部分の皮膚をオーナーに渡す契約を結んでいるそうです。
青春は等しく痛々しい2作品
「ひらいて」
2021年製作/121分/PG12/日本
あらすじ
学校でカースト上位の美少女・愛は実はクラスで目立たない(でも頭はいい)たとえ君に片思いをしている。
ある日、たとえが目立たない陰気な少女・美雪と密かに交際していると知った愛は美雪に近づき奇妙な三角関係が始まる…。
可愛く頭も良く適度にやんちゃもする愛は一部女子からのやっかみはあるものの人気者。だけど仲良くしている友達にも好きな人がいることは明かさずに閉じている。
大好きなたとえ君が美雪と交際し自分になびきもしない上に「目が笑ってない笑顔気持ち悪い」みたいなことを言われ段々となりふり構わず暴走していく。
美雪に手を出し髪の毛にストレートアイロンをかけずマニキュアも塗らなくなった愛は閉じた良い子を止め、人も離れていく。
愛は滅茶苦茶だし共感もしないけれど何らかの形で報われてほしいというか応援する気持ちで観ていました。
愛を演じる山田杏奈、美雪を演じる芋生悠、たとえを演じる作間龍斗、キャスティングもハマってて良かった。
※ネタばれありの感想になります
「ディア・エヴァン・ハンセン」
2021年製作/138分/アメリカ
あらすじ
友達もなく、家族にも心の内を明かせないエヴァンはカウンセリングの一環として「ディア・エヴァン・ハンセン」という書き出しで自分への手紙を書いている。
ある日その手紙を同級生のコナー(問題児)に取られてしまい流出・拡散を恐れるエヴァン。
SNSをチェックするも流出した様子がなく一安心するエヴァンだが、ある日コナーの両親からコナーが自殺したと知らされる。
コナーの両親は息子が持っていたエヴァン宛の手紙を遺書だと思い、エヴァンを息子の親友認定。息子とどう過ごしていたのかを教えてほしいと請うてくる。
本当のことを言えず、エヴァンはコナーとの存在しない友情を語ることになるが…。
歌は良いし嫌いではないんだけど感動ではなく「やっぱり度が過ぎた嘘はよくないね」としか思えないほどエヴァンは嘘を重ねすぎ。
個人的には感動作ではなく「嘘はダメだよね」と肝に銘じる映画でした。
友達のいないエヴァンがコナーとの存在しない友情を捏造妄想して語る時に、嘘なんだけどでも本当に自分にはコナーという心許せる友達がいてなんでも話すことが出来たんだ…と孤独が癒えるような感覚になったのかなとも思います。
それでどんどん嘘をついていってしまった部分もあるのかなと。
それでも最初は思いやりからついた嘘がどんどん自分の為の嘘になっていき嘘をついているという罪悪感も薄れていったのと、ゾーイへ嘘をついたまま恋人になったのとコナーの両親からの奨学金の話に本当のことを言わなかったのが「ないわーエヴァン」とドン引きでした。
ゾーイ本当にかわいそう。
学校の皆もコナーを遠巻きにしていたのに自殺してからコナーのロッカーを飾り写真を撮って惜しんだり、「エヴァンとコナーの思い出の果樹園を復活させよう!」とクラウドファンディング始めちゃったりSNS用の自分が別にいるような感覚や拡散の早さと取返しがつかない感じがとても現代的でした。
文句ばかり書いてしまったけど歌とエヴァンが真実を告白した後、きちんとコナーの足跡を辿りコナーの歌を彼の両親へ届けたのとゾーイとヨリを戻さずフラれっぱなしだったのは良かったです。
番外:おすすめ2.5次元舞台の劇場版
私が2.5次元作品を観るきっかけになった「舞台 刀剣乱舞」がこれまで上演した中から8作品を映画館のスクリーンで上映する「劇場版 刀剣乱舞」企画の第一弾が11/23から始まりました。
劇場版 舞台 刀剣乱舞 虚伝 燃ゆる本能寺
2021年製作/日本/138分/
あらすじ
西暦2205年。
過去に遡り歴史を改変しようと目論む「歴史修正主義者」
時の政府は付喪神を顕現させる能力を持った「審神者(さにわ)」なる者に歴史の守りとして刀剣に宿った付喪神を「刀剣男士」として顕現させ、審神者と刀剣男士は歴史を守る戦いに身を投じていく。
今回の戦場は天正10年の本能寺。
織田信長が明智光秀の謀叛により果てたとされる「本能寺の変」である。
歴史にそれほど興味がない場合でも何となく知っているであろう織田信長と本能寺の変、それに関わる刀たちの視点というのも面白く殺陣も見応えがあるのでこの企画をきっかけに刀剣乱舞よく知らないという方や、ゲームの刀剣乱舞は好きだけど2.5次元舞台は観たことないな…という方、2.5次元ちょっと興味あるという方、少しでも興味を持たれたらまず1回、観てほしいなぁと思います。
ちなみに初演なのでウィッグの前髪が固めの鋭角になってたりしますが徐々に改善されていきます。
こちらの「虚伝」は12/13までで(一部劇場では延長ありとのこと)、第二弾は「義伝暁の独眼竜」です。虚伝飛ばして義伝から観ても大丈夫。
2021年11月に観た映画はこんな感じでした。
12月もよい映画に出会えますように!