レビュメモ!

映画・舞台・本のレビュー。ネタバレありの時はその旨表記します。映画と漫画と美味しいものがあれば大体しあわせ。

「サニー/32」ネタバレなし&ネタバレあり感想 ある意味正しいアイドル(偶像崇拝)映画

あなたは今日できたりえ推し!ほらチームB~♪

「まだわかんねぇのか?」な北原里英(きたりえ)初主演映画です。

今はNGT48所属で、卒業を控えているんですね...? 

http://eiga.k-img.com/images/movie/87794/photo/fbffeaf0303568e5/320.jpg?1509082969

2018年/日本/110分/北原里英/ピエール瀧/リリー・フランキー

65点

あらすじ

仕事も私生活も今ひとつの中学校教師・藤井赤理は、24歳の誕生日に2人組の男に誘拐されてしまう。誘拐犯の柏原と小田は「犯罪史上、もっとも可愛い殺人犯」と呼ばれ世間を騒がせた少女サニーの狂信的な信者で、赤理を「サニー」呼んで監禁するのだが...。

以上、映画.comより

 

「サニー」というのは小学生女児による同級生殺害事件の犯人の通称

被害者と加害者が隣同士で写ったクラス写真がネットで拡散され、幼くいたいけなルックスと写真の決めポーズ(右手が3本、左手が2本)が信者達の間で32(サニー)ポーズと名付けられ、加害女児もサニーと呼ばれるようになった...という、2004年の長崎の事件をモチーフにした映画です。事件内容(同級生をカッターで殺害)、加害女児がネットでアイドルのような扱いをされて...というところまで一緒ですが、すごく...ぶっ飛んだ内容の映画でした。

確かにこの展開は予測不能だった。

 

ネタバレなし感想

藤井赤理は冴えない中学校教師。ストーカーに狙われるわ、イジメにあっているらしき女生徒(ムカイさん)を助けたいと手を差し伸べるも「先生だけには話さないし!話すくらいなら一人言で十分だし!」と拒絶されるわで空回り。

24歳の誕生日、ストーカーは逮捕されるも、その直後に2人の男に拉致されてしまいます。自宅アパートに侵入したところを現行犯逮捕されたストーカーがパトカーで輸送されたのを見送って自室に戻ろうとするのですが、扉の前に蝋燭の灯ったバースデーケーキが置いてあり、驚愕したところを拉致されます。

警察の目を盗んでケーキの準備をした男2人、行動が早いです。

 

ビニール袋を頭ごと被せられ、呼吸困難なところをやっと解放されると見知らぬあばら家で両手両足を拘束されていて、怯える赤理。

そんな赤理に「ずっと会いたかったよ、サニー」と甘く囁きながらも赤理が暴れると鼻血が出る強さで殴ったり容赦がない柏原(ピエール瀧)と、殴ってはこないけどずっと自分の股間を触っていて気持ち悪い小田(リリー・フランキー)。

「私はサニーじゃありません!」と言ってるのに、名前が一致してるから年齢が一致してるからお前がサニーだろうがぁ!と聞く耳を持たない男2人。

本物だったら中学校教師とかしてないと思うんですが…。

なぜ教師設定?と疑問でしたが後半で赤理を教師にした意図がわかります。

 

逆らうと脅されるし殴られるので、怯えながらも言われるがままに用意されたピンクのフリルワンピースに着替える赤理。薄着で寒そう。

ケーキの前で32ポーズをとらされ「お久しぶりです、サニーです」と言わされる赤理。

それらの写真や動画を「サニーたんを愛する掲示板www」にアップする柏原と小田。

「え、本物www?」みたいに軽い反応のネット民。

『もう耐えられない!』と隙をついて脱走を計る赤理。

ピンクのドレスで雪の中を必死で逃げる、やっと車道を走る車を見つけ、「助けてください!」と飛び出すも、乗っていたのはサニー狂信者ご一行でした...。

 

もっとも可愛い殺人犯ファンの、医者やレズビアンや大学生や、濃い面々が集まり「1人20分限定」でサニー(赤理)と1対1のファンミーティングが始まります。

トップバッターの医者はサニーの膝に頭を乗せつつ脈を測り「僕は医者だから週に1回、サニーの健康管理をするよ」と言い、サニーへの思いを語るのですが。

「僕は君の事件が起きて人生が変わった。それまでキリギリスの味がするキュウリを食べられなかったけど食べられるようになった。僕はキュウリを食べなかった32年を取り戻すようにキュウリを食べた」みたいなことを言います。

 

え、何でキュウリ?

 

このキャラをもっと掘り下げてほしかったんですが、紛れ込んでいたサニー事件の被害少女の兄が乱入し赤理を殺そうとして、それをかばった医者は早々に刺されて瀕死の重傷になってしまいます。

赤理も「キュウリエピソードは意味わからないけど医者だしまともそう」ってことでこっそり「実は私サニーじゃないんです、ここを出たら警察に行ってください」とお願いしてたのに。

殺傷事件が起きたことで現場は大混乱なうえに、何故かドローンが隠れ家を撮影していることもわかり皆で冬は使われていない海の家に移動。

赤理は一人だけ必死に医者に「死なないで!」と呼びかけ出血も止めようとしますが病院に連れて行ってもらえすはずもなく医者は死んでしまいます。

「何で病院に行ってくれなかったの!」と悲しみ怒る赤理を見て「かっわいい!怒ってる!」と喜ぶレズビアン。信者の中では個人的にこの人が1番怖かったです。

 

気軽に死体を埋めるヤンキーカップル

海の家にはヤバい先輩から逃げているヤンキーカップルが潜んでいて、当たり前に発見されご一行に脅されるのですが何故か仲間になり一緒に医者を埋めます。一見病んでる風でもないチャラいヤンキーカップルなのですが、気軽に仲間に入って死体を埋めるのが怖い。

大学の卒論の為にやってきた大学生は「なんか(サニー)期待外れ」と言ってしまい「サニーをディスったから」と殺されます。ちなみに誰か死ぬたびに死亡者の「名前・年齢・死因」がドーンとテロップ出るのがちょっと面白いです(そんなにグロくなくあっさりどんどん死ぬので深刻になれない)

 

死体を埋める殺伐とした空気のなか、ドローンの持ち主が現れるのですが、YouTuberのようなニコニコ動画の生放送主?みたいなことをしているひょろっこい少年でした。

ヤバい大人に達に当然激怒されるも、スタンガンを使いこなし赤理以外を沈め縄で拘束するドローン少年。

動画の再生数を稼ぐべく、犯罪史上もっとも可愛い殺人犯、サニーへ単独行動インタビューを決行します。人違いなんですが...。

 

スーパーキタコレタイム

赤理、覚醒。

ここまで散々いたぶられ好き勝手された赤理、マイクを向けられ煽られとうとうキレます。

スタンガンにも負けず、電気ショックも覚醒アイテムに変え、信者、カップル、ドローン少年ひとりひとりに「どういうつもりだ、アァン?」と懺悔を迫り殴り蹴りトラウマや心の闇を吐かせた挙げ句に「辛かったね、私はその辛さわかるよ…!」と抱きしめ受け入れます。

「自分は特別な存在で今はまだ本気だしてないだけ。バイト先で『バイトくん』って呼ばれてるけどたまに名前で呼ばれるとすごく嬉しい」と小田。

切ないです。

「自分にとって愛=暴力で、本当は女性が怖くて暴力に逃げている。ダメな自分をサニーへの傾倒のせいだと言い訳にしていた」と柏原。

だから愛しのサニーなのにあんなに殴ってたのかぁ…。

イメージとして、抱きしめ赦された時に各々「ハレルヤ」が鳴り響いたんじゃないかと思います。みんな自分を赦してくれたサニー(赤理)にメロメロになります。

ネットの視聴者数もうなぎ登り、しかもその中に赤理を「先生」と呼ぶ教え子ムカイさんも。

「先生、学校よりいい感じ!」「サニーは神」「888888888888」「キタコレ」と教え子ムカイさんとネット民から称賛され『認められた』『報われた』と恍惚な赤理。

 

「みんなが私をサニーと呼ぶなら

  私はサニー」

 

 

スーパーキタコレタイム=スーパーきたりえタイム

このキタコレタイムが長丁場で、主演北原里英の見せ場になってます。

柏原の暴力懺悔を聞いた時に「女が痛みに強いのは出産の為だ、男の暴力に耐える為じやない、理解しろ理解しろ理解しろ…‼」と振り絞るのは赤理自身に男親の暴力のようなトラウマがあるのかな、と想像させます。

ドローン少年にも「誰にも抱きしめられたことがないのはお前だけじゃない、私もそうだ」と言ってたし、守ってくれるような母親もいなかったぽい。

自分自身が認められたり守られたりすることがなかったので、教え子を救ってあげたかったし覚醒後にスーパーキタコレタイムが展開される流れになったんですね。

 

観ていて「何だろうこの茶番」と思いましたがこの感じ嫌いじゃない。

 

 覚醒後の演技自体は、圧巻とはいかず迫力が欠けるという印象ですが、日本中を震撼させるような大事件を起こすような女の子では赤理はないのだから、この映画ではこの演技で良いのかなと、この後に登場する第二のサニーとの対比含めて思いました。

 

二人のサニー

赤理がサニーとして覚醒してほどなく、「私が本物のサニーです」とネットに第二のサニー(門脇奏)が現れます。

赤理と同じようにどこかに監禁されている風。

自分の指の骨も折ってしまうこの第二のサニーがいかにも壮絶な過去を背負ってそうな病んだ雰囲気を放ちまくっていて、偽者サニー(といっても勝手に間違われてしまった)赤理とパソコン画面越しに対話をする場面では北原里英の演技慣れしてないすれてない感じが「一線を越えた殺人犯」と「トラウマを抱えながらも道を踏み外さなかった一般人」として上手く描かれているなと。

キャスティングが見事というか初主演である北原里英を絶妙に活かして撮られているのでは。

 

ファンにも色々あって

あばら屋に集まったメンバーは全員サニーのファンな訳ですが、それぞれサニーに対する考えや思い入れや抱く欲が違って、これって程度の違いはあれどサニーに限らずアイドルや俳優や何者かに対するファン心理そのもので、「行き過ぎたアイドル(偶像崇拝)映画」なんだと思いました。

それをアイドルである北原里英で撮る悪趣味(誉めてます)

愛=暴力で殴ってくる柏原も怖いですが、レズビアン女性が泣いて怒るサニー(赤理)を見て「かっわいい!怒ってる!」と喜んだり、赤理に救われたけれど「赤理は偽者サニーである=本物ではない。信じてたのに騙された」ことが許せない…というのが、ジャンル問わず行き過ぎたファン心理あるある。

ちなみに柏原は赤理に救われて「本物か偽者かなんて関係ない、ここにいるのが俺たちのサニーだ!」と憑き物が落ちたようになっていました。

 

 

以下、ネタバレあり感想

 

 赤理を教祖とした新興宗教みたいな集団になり、つかの間の疑似家族のような時間を過ごす面々。

キタコレ説法というかお悩み相談も絶好調な赤理。

ネット視聴者も8000人。

しかし教え子ムカイさんから、サニー事件と同日に同級生殺害を計画している…みたいな意味深なメッセージが届きます。

ドローン少年の力を借り、第二のサニー(本物)に「どうすればあの時、事件を起こさずにすんだか考えて教えてほしい、教え子を助けたい。サニーはたくさんいる」と訴える赤理。

回想で、サニーが事件を起こす前、被害者少女とお互いの悩みを共有して慰めあえる親友同士であったと描かれます。

「二人で遠くに逃げようって言ってたのに『帰ろう』って言われたら傷つくじゃないですか!」と本物サニー。

「(どうすれば殺さないでいられたかなんて)考えたけどわからないよ!」と泣き叫びながらも「その子を助けてあげて、私みたいな子を増やさないで」と。

サニーの言葉を聞き、ムカイさんの詳細な居場所はわからないけどとにかく止めに行かなきゃ!と決意する赤理。

そんな時にヤンキーカップルのヤバい先輩が登場し、カップルともみ合っていたところ警官が現れ発砲沙汰になり一気に人が死に赤理たちも内部分裂してしまいます。小田が警官も殺してしまったのでパトカーも海の家にめっちゃ来ます。

更にタイミング悪く、二人のサニーのやり取りから赤理が偽者サニーだと知ってしまったレズビアン女性が発狂しサニーを殺そうとします。

収拾がつかない感じのなか、怪我を負いながらも追っ手から逃れ屋根の上に行き着く赤理。

もう逃げ道がない…というその時に、赤理を逃がさんとドローンが飛んで来ます。

ジャンプしてドローンにぶら下がる赤理。

バッテリー切れ?で落下してしまいますが、危機一髪で小田が運転する車(ドローン少年も同乗)の屋根へ。

柏原は赤理を逃がそうと足止め役になり屋内で死亡。

ムカイさんは自分をハブった、元仲良しの女子二人を殺してしまおうとカッター片手に二人がいるカラオケボックスに乱入。

カッターを振り上げるも…切りつけることが出来ずその場で号泣します。

 

 人がたくさん死んだけど、本物のサニーも赤理達もこれからどうなるかわからないけど、とりあえず第二のサニーは生まれませんでした…。

 

良かっ…た……?

 

 

 

 

 予告で観た感じほどグロくもないので、「興味はあるけどグロそうで観るか迷う」という人も大丈夫かと思います。

そして少年少女の凶悪犯罪の動機・きっかけって多種多様だと思うのですが今回はそのきっかけを少女同士の友情の行き違いとして回想できれいめに描いているのがスーパーバイザー・秋元康エッセンスを感じます。

しかしキュウリほんと気になる。

 

 

 

 

 

 

 にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ