『映画大好きポンポさん』で、ポンポさんが
「まぁ極論 映画って女優を魅力的に撮れればそれでOK でしょ」
と言っていたのをいい意味で思い出した一本。
綾瀬はるか(我儘姫)可愛いいぃ。
2018年/日本/108分/綾瀬はるか/坂口健太郎
75点
あらすじ
映画監督を目指す青年・健司はモノクロ映画のヒロインである美雪に心を奪われ、スクリーンの中の彼女に会うために映画館に通い続けていた。そんなある日、美雪が実体となって健司の前に現れる。モノクロ姿のままの彼女をカラフルな現実世界に案内するうち、健司と美雪は少しずつ惹かれあっていく。しかし美雪には、人のぬくもりに触れると消えてしまうという秘密があった。
以上、映画.comより
入院患者・牧野(加藤剛)は余命短く、見舞い客も孫と思われる一人のみ。
看護師の吉川(石橋杏奈)は「お孫さんも毎日見舞いには来るけどふらついて倒れた牧野さんを助け起こしもしない。絶対遺産目当て」だと、牧野に同情している。
牧野の検温を担当した吉川は、机の上にある原稿用紙を発見。
これは何かと尋ねる吉川に、牧野は「若い頃に映画の助監督をやっていて、その時に書いたシナリオだよ」と答える。
「どんな話か教えてください!」と椅子に座り聞く気満々な吉川に、牧野は語り始める…。
そこから、↑のあらすじ内容に入っていく流れ。
ネタバレなし感想
綾瀬はるか、可愛い
ヒロイン美雪を演じるのは綾瀬はるか。
映画監督を目指す青年、健司は行き付けの映画館、ロマンス劇場で偶然に、埃を被った白黒映画フィルム(『我儘姫と三獣士』)を見つけ映画のヒロイン美雪に淡い恋心を抱くもなにぶん古い映画、主演女優は既に亡くなっており、閉館後の映画館で一人映画を上映させてもらいスクリーンの彼女を見つめるしかできない。
しかしある日、ロマンス劇場支配人、本多(柄本明)に「物好きにフィルムを譲ってほしいと言われたので売る。その映画が観れるのは今夜までだ」と告げられます。
ショックを受ける健司の前に、落雷の衝撃とともに美雪が目の前に現れて…。
「美雪を演じていた女優」ではなく「映画の登場人物である美雪」として白黒映画から抜け出て来ます(そのため一人だけモノクロ)
なので撮影所のメイク室で顔と体に化粧をして自分に色をのせます。
時代背景や、舞台が映画の撮影所ということもあり美雪の衣装がレトロ可愛くまた似合っていて目を楽しませてくれます。
デコルテも綺麗で、顔だけじゃなくボディケアもきちんとしてるんだろうなぁ、女優さんだなぁとうっとり。
美雪は我儘姫なので序盤特に好き勝手して健司を振り回すんですが、これ綾瀬はるかが演じているから許せるんだと思いました(あとは健司がホントお人好しでちょっとドMかな?て感じだったので上手くいったのだと)
スタッフも主演女優を魅力的に撮る、という点徹底してます。
昭和レトロと色の美しさ
ヒロインの美雪だけでなく、健司やその他キャストの衣装はもちろんロマンス劇場の内装、外装…全て昭和レトロの香り。
白黒映画から飛び出した美雪は色というものを知らず、ポストを差し「これは何だ?」と健司に尋ね、健司は「赤です」と答える。
いろいろな色を知り楽しそうな美雪に、健司は「いろんな綺麗なものを見せてあげたい」と、シナリオハンティングも口実に外へ連れ出します。
色鮮やかな花であったり空にかかる虹であったりささやかに光る蛍であったり。
映像、色が綺麗で表現ヘンですがロマンティックが盛り上がる盛り上がる。
映画のラストでも小粋な「色の演出」があります。
悪人が一人もいない
ハンサムガイな大スター・俊藤龍之介(北村一輝)はぺーぺー助監督な健司に白いスーツにペンキぶちまけられても美雪の間違いからダイナマイトで吹き飛ばされ大怪我をしても、ヒクつきながらも許して後も引きずらず、様子のおかしい美雪を心配し健司に報告までします。
周囲を振り回しつつ大スターの自覚があり自ら何時なんどきも大スターであるべきというスタンスなのだと思うのですが、大スターほんと大スター。
そしていい人。
健司の助監督仲間である中山(中尾明慶)も、監督デビュー(健司は美雪との物語をシナリオにし、監督デビューのチャンスを手に入れますが、ラストだけ書き直しを命じられます)を先越されてショックを受けながらも発破をかけて励ますし憧れのお嬢さん・塔子(本田翼)が健司を好きと知って落胆しながらも恨んだり足を引っ張ったりしません。
またいい人。
美雪は『触れたら消えてしまう自分では、健司を幸せにできない』と、健司に思いを寄せる塔子を呼び出し『あいつを頼む』と助言し託そうとします。
しかし美雪に去られ荒れ気味な健司を見ていられず、『実は…』とそのことを打ち明ける塔子。
やっぱりいい人。
一人くらい性格が悪い登場人物がいてもいいんじゃないかなーとも思いましたが、この悪人のいなささがファンタジー色を強めます。
観た後に優しい気持ちにはなれるのですが、「良い話だしヒロイン可愛いし映像も綺麗なんだけどいまいち心に響かない」とゆう個人的に微妙な評価になってしまいました。
作り手は「悪人がいない、ひとさじの物悲しさを落としつつ幸せなラブストーリー」を撮りたくてそこをしっかり押さえてると思われるのであとは観る側の好みの問題なのでしょう。
「見つけてくれて、ありがとう」
カラーT Vが家庭に普及して映画の客足が遠退きつつある時代が舞台で、物語の中でも「人々の記憶に残る映画はほんのわずかで、ほとんどは忘れ去られてしまう」みたいなフレーズがあります。事実、その通りです。
美雪もそんな「忘れ去られた映画」の登場人物で、埃を被っていたフィルムを偶然に健司が見つけ、誰を楽しませることもできなくなっていた自分を健司は毎夜、熱心に見つめてくれて、その思いが重なって。
美雪が健司に「見つけてくれて、ありがとう」と伝えるのですが。
大好きな映画、思い入れのある映画にどんなに熱い思いを抱いていても対象の映画は無機物なので通常気持ちは一方通行な訳ですが、もし自分の好きな映画やその登場人物から「ありがとう」と言われたら、こんな幸せはないですね。
でもホラー映画から「ありがとう」言われたら震える。
オマージュいろいろ
「ローマの休日」「ニュー・シネマ・パラダイス」や日活の「ほにゃらら・ガイ」シリーズなどなど、色々な映画のオマージュが作中散りばめられているのを映画好きな人こそ気付いてクスリとなるかと思います。
私はいくつかわからない(タイトルしか知らない)元作品があったので機会があれば観てみたいです。
ガラス越しのキスシーン
二人でいろんな綺麗なものを見、同じ時を過ごすごとに惹かれあう二人ですが、美雪は『触れたら消えてしまう』という秘密があるため、手を繋いだりといった接触をさりげなく避けます。
唯一ガラス越しのキスはあります。
ロマンティックが過ぎる。
以下、ネタバレあり感想
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健司の為に身を引こうと、アパートを出るも行くあてもなく途方に暮れる美雪に声をかけたのはロマンス劇場支配人、本多でした。
実は本多もその昔、映画のヒロインを迎え入れたことがあるとのこと。
その彼女は人に触れて消えてしまったのか、元の世界に戻ったのか既に傍にはいないと語ります。
美雪に去られ、らしくもなく昼間から酒を飲んだり、シナリオのラストも全く浮かばない健司。
しかし塔子に、美雪に呼び出され「あいつ(健司)を頼む」と助言をされたと告白され、やっぱり美雪と一緒にいたい!と決心。
二人の思い出の風景をたどりますが美雪はいません。
そんな健司に「彼女は(ロマンス劇場に)いるよ」と本多。
二人が出会ったロマンス劇場へ走る健司。
再開を果たした二人.。
美雪は言います。
「消えてもいい。抱きしめてほしい」
涙ながらに請う美雪に健司はゆっくり手を伸ばしーーーー。
切ない展開に泣きながら「それから二人はどうなったの?」と急かす看護士に「続きはないんだ。書いていないんだよ」と答える牧野。
「絶対続き書いてください!楽しみにしてますから!」という看護士。
そこへ牧野の見舞い客が訪れ、看護士は席を外します。
やってきたのは、思い出と同じ美しい姿をした美雪でした。
病室の牧野健司を毎日見舞う、孫と思われていた人物は美雪でした。
アパートの階段で転んだ美雪を、助けたいのに触れられず手を貸すこともできなかった場面で「あっ…」と思った(早い人は「触れたら消えてしまう」という告白の場面でピンときたと思われる)のですが、ふたりは何十年もの間、指先すら触れあうことなく寄り添い続けていたのです。
純愛が過ぎる
あの日、ロマンス劇場で
「消えてもいい。抱きしめてほしい」
と言った美雪にのばしかけた手を、健司は戻していました。
「触れられなくていい。ずっと一緒にいてほしい。あたなじゃなきゃ駄目なんです」
病室でシナリオを見つけ、これは何だと尋ねる美雪に「僕たちの物語だ。君が一番ほしいものをあげるよ」と答える健司。
健司が入院しているため、家に一人きりな美雪はアルバムを開き思い出をたどります
。
海辺の散歩はお互いにハンカチの端と端を握る。
結婚写真も距離をとって。
キスをするときはやっぱりガラス越し。
思い出のロマンス劇場閉館を見守る時も肩を寄せ合うこともできない。
健司だけが老い、車椅子から転倒しても美雪は手を貸すこともできない。
そこへおそらく病院から、健司の容態急変を告げていると思われる電話が入ります。
老いて死に向かう健司、駆けつける美雪。
健司の今際の際、美雪はやっと、健司の胸に身を預けその温かさを実感します。
「こんなに温かかったんだ…」
幸せな微笑みを浮かべ、美雪は消えていきます。
翌朝、看護士の吉川が病室を訪れると牧野は既に息を引き取っていました。
そばには誰もいません。
吉川は牧野が続きを書くと約束した、あのシナリオを発見します。
シナリオはラストまで書き上げられていました。
君を幸せにするラスト
場面は「我儘姫と三獣士」の冒頭、モノクロ世界の舞踏会に美雪姫が現れる場面。
美雪は椅子に座り、舞踏会を眺めます。
これまでと同じシーンの繰り返し。
そこへイレギュラーな出来事が。
若かりし日の健司が扉を開き、美雪の前に一輪の薔薇を差し出します。
受け取った薔薇は赤く色づき、そこから会場全体が色をおびはじめ、やがて世界が色づきます。
くちづけを交わす二人を祝福する舞踏会の参加者。
拍手を贈るその中には現実世界での二人を見守ってき本多、塔子、中山、俊藤の姿が。
美しく色づいた世界で、皆に祝福され身を寄せ合う二人。
物語の中で二人は紛うことなきハッピーエンドを迎えたのです。
~~End~~
※「End」は筆記体なイメージ。
後半から一気に盛り上がり泣かせにきた感じでした。
私も実際泣いたんですが、「感動した」というより「いい話だな」という印象。
たぶんファンタジーとリアリティーの比率が自分には合わなかった。
かなりファンタジー寄りではあるんですが、ここまでファンタジーに寄せるなら更にファンタジーに振り切ってくれたほうが個人的には良かったなぁと。
ここががっちりハマれば、良く作られた映画なので採点もはね上がるんだけどなぁと、せっかく綺麗でロマンティックな映画なのに浸りきれなかった自分が残念。
余談
ハイティーン主婦
ロマンス劇場に上映中の映画看板が二つかかってるのですが、それが「カサブランカ」と「ハイティーン主婦」というすごい並びになってます。
観てみたい「ハイティーン・主婦」