レビュメモ!

映画・舞台・本のレビュー。ネタバレありの時はその旨表記します。映画と漫画と美味しいものがあれば大体しあわせ。

尊き四姉妹にみる女の幸せ4選2019年版「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」ネタバレなし→ネタバレあり感想

「家庭的な女性」「自立した女性」「無欲な女性」「現実的な女性」それぞれの幸せに優劣をつけないのがとても良い…という真面目な感想を持ちつつ四姉妹の尊さに悶えることもできる良作でした。

 

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2019年/アメリカ/135分/シアーシャ・ローナン/エマ・ワトソン/エリザ・スカンレン/フローレンス・ピュー/ティモシー・シャラメ/メリル・ストリープ/80点

 

あらすじ

しっかり者の長女メグ、活発で信念を曲げない次女ジョー、内気で繊細な三女ベス、人懐っこく頑固な末っ子エイミー。女性が表現者として成功することが難しい時代に、ジョーは作家になる夢を一途に追い続けていた。性別によって決められてしまう人生を乗り越えようと、思いを寄せる幼なじみローリーからのプロポーズにも応じず、自分が信じる道を突き進むジョーだったが……。

ー映画.comよりー

 

 

 

ざっくり感想(ネタバレなし)

悪人のいない優しい世界

「女はこうあるべき」みたいな昔ながらの頭の固い人や意地悪な人は出てくるけれど悪人は出てこないので、最近いともたやすく人が殺される映画を続けて観ていた私は癒されました。

四姉妹尊い

四姉妹がキャッキャウフフと戯れる様、いと尊し。

ローリー(ティモシー・シャラメ)の美青年ぶりに目をかっぴらく

甘い顔立ちは好みではない自分が「え…ローリー美し過ぎでは…?は…?」と動揺するレベルに美しかったです。

みんなちがって、みんないい

ここ数年の王道「王子様を待つのではなく己の力で道を切り拓き自分なりの幸せを掴む系女子」な次女のジョーがヒロインですが、他の姉妹の幸せの形を古くさい前時代的なものとするのではなく「みんなちがって、みんないい」としていたのが良かった。

キャストが豪華

かなり豪華なぶん序盤は出演者の過去作が頭をよぎりましたが(特に「ミッドサマー」)さすがの演技力で観ているうちにちゃんと若草物語の登場人物として見ることができました。

しかし時系列がわかりづらい

ジョーが都会で働いている現在と実家で暮らしていた7年前が交差するのですが切り替わるタイミングがわかりづらい。同じ動作とカット割りで過去と現在の違いを表しているのは上手いけれど原作の流れを知らないと混乱してしまうのでは?とも。

 

 

 

物語の舞台

舞台は1860年代のアメリカ・マサチューセッツ州と7年後のニューヨーク。

マーチ家の四姉妹、その次女であるジョーを軸にした物語。

「女性の仕事は売春宿か女優の二択」という台詞が出てくる時代にジョーは作家を目指しています。

冒頭、ジョーは自作の小説を出版社に「知人の書いた物」だと持ち込みます。

そう悪くない感触でしたが「もっと大衆向きに」「主人公が女性なら最後は結婚させるか死ななければ」みたいに注文をいくつもつけられます。

原稿料も足元を見られるジョー。作者名は?と訊かれ自分の名前を告げることもできません。

ジョーは教師をしつつ小説を書き暮らしていましたが、同じ下宿先に住むドイツ人哲学教授・フレデリックとほのかにいい感じ。

フレデリックに「君の書いた小説が読みたい」と言われ了承するのですが、編集者に言われた通りに書いた大衆受けを意識した小説にフレデリックは親身であるが故「才能はあるが」「これが君の書きたいものなのか?」「僕の読みたいものじゃない」と本音炸裂の指摘をしてきてジョーはキレてしまいます。

さらに故郷から病弱な三女「ベスが危ない」と手紙が届き実家に戻ることを決意。

そしてジョーの7年前の夢と回想・現在が展開されていく…。

 

「若草物語」は原作者ルイーザ・メイ・オルコットの自伝的小説で、オルコット=ジョー。この作品では更に監督であるグレタ・ガーウィグ=ジョー(シアーシャ・ローナン)でもあるのだと思います。

 

 

女性が小説を書く、という作品では「フランケンシュタイン」を書いたメアリー・シェリーを題材にした「メアリーの総て」もこの「ストーリー・オブ・マイライフ」とは真逆な感じで鬱々しくも美しく面白かったです。 

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マーチ家の四姉妹

遠い昔に原作を読んだことがあるも昔過ぎて細部が曖昧だったんですが、四姉妹のキャラクターはしっかり覚えてました。それくらい個性豊か。

改めて映画を観て思ったのは私の記憶以上に四姉妹がわかりやすく個性バラバラで魅力的で変な例えですが「新作プリキュアのキャラクターのモデル」にもなれるのでは…しかも人気もちゃんと出そう…ということでした。

 

 

長女メグ…美人で家庭的。「貧乏は嫌ね」といいつつ金よりも愛をとる。

次女ジョー…活発で色恋よりも小説のことで頭がいっぱい。女らしくはないけれど長い髪は自慢。

三女ベス…無欲でピアノ大好きなみんなの天使。病弱。天使なのでお隣の偏屈な老人の心も溶かす。

四女エイミー…こまっしゃくれた末っ子で可愛げもあるがえげつない面も。しかし家族は大切に思っている。将来の夢は画家。夢も見るが現実も見えている。ジョーとよく衝突する。

 

マーチ家四姉妹、キャラが濃いうえ被らない。加えて姉妹同士の仲が良く、特に美人な姉が自慢なジョーが結婚を控えたメグに「一緒に逃げよう」と言ったり病弱なベスを守ろうとするジョーとか内心で天使なベスと我儘な自分を比較していたっぽいエイミーたまりませんでした内心悶えた。ジョーとエイミーのそりが合わない感じもリアル姉妹にありそうでそれはそれで良い。

今回の映画の中でもマーチ家のお隣の坊ちゃん・ローリーとその家庭教師・ブルックさんが四姉妹と顔を合わせた時、キャーキャーとはしゃぐ四姉妹を見てなんともいえない笑みを浮かべていたんですがあれは「尊い…」という心情なのだと思います演じてる本人たちは「尊い」なんて知らないと思うけど。

7年前の四姉妹はクリスマスに姉妹で創った劇をしたりジョーとエイミーが大喧嘩をしてあわや、となったりベスが優しさ故に病気を伝染され死の淵をさまよったりメグが結婚したりお金のためにジョーが自慢の長い髪をバッサリ切って売ってしまったり、色々ありますがキラキラした少女時代を過ごします。

 

 

お金持ち美男子なのに不憫・ヒロイン的なローリー

お金持ちの家に生まれたけれど家族の温かさを知らないローリーはマーチ家が大好きで、独自の世界と価値観を持ち溌剌としたジョーに恋をして告白するのですが「友達としてしか見れない」とフラれます。

けっこう食い下がって「君が好きだ君が好きだ」と懇願しますがフラれます。

あの顔面に縋りつかれて絆されないジョーすごい。

「俺は都会で一旗あげる。俺にはお前を幸せにすることはできねぇ住む世界が違うのさ」なヒーローヒロイン(ジョー)と「あたしと幸せな家庭を作りましょう!あなたが好き!」なヒロインヒーロー(ローリー)だなと思いました。



 

 

以下、ネタバレあり感想

 

 

 

7年後(現在)の姉妹

メグはお隣の家庭教師・ブルックさんと結婚し可愛い子どももいますが貧乏です。

お金ではなく愛をとっての結婚でしたが貧乏はやはり辛い。

夫のコートを仕立てにいった先でつい見栄をはり自分のドレスをオーダーしてしまいます。そのことでちょっと揉めるというか旦那さんが自分の甲斐性のなさにショックを受けてしまいます。メグ後悔。

 

エイミーはお金持ちのマーチ伯母様に「あなたが四姉妹で一番現実的。お金持ちと結婚して家族を助けるのよ」と見込まれパリでレディの修行?をしつつ絵の勉強。お金持ちからのプロポーズ目前ですがジョーにフラれてからやさぐれっぱなしローリーと再会。かつ自分には絵の才能はあるが大成するほどではないと見極め絵を描くのをすっぱり止めることを決意。毅然としたエイミーに惹かれたローリーに告白されますが「好きな人の二番目になりたくない」と断ります。

 

重体だったベスは持ち直しますが依然油断ならない状態。

ジョーはベスに「この家に戻ってくる」と言いますが「私たちの物語を書いて」と小説を書くことを続けてほしいと言います。

そしてベスは天に召されてしまいます。

 

 

四姉妹の幸せとジョーのそれから

ベスが亡くなり、葬儀のため姉妹は再び生家に集います。

 

家庭的なメグの夫・ブルックは「ドレスを作るといい」と言いますが、言われる前にメグはドレスのオーダーを取り消していました。

貧乏は辛いけれど、強がりではなく愛する夫と子どものいる幸せが何より大切なメグ。

 

現実的なエイミーはしかし、打算から受けようとしていたプロポーズは断ります。二番目は嫌だと断ったローリーからの告白ですが「ジョーの代わりじゃなく君が好きだ」と再度告白され結婚することに。諦めた夢と手に入れた愛があるけれど愛の為に夢を捨てた訳ではないエイミー。

 

無欲だったベスは病弱ながらも家族に尽くし皆を愛し愛され生を終えました。

 

自立した女性であるジョーですがショックが重なり一瞬とち狂って今更ローリーの告白を受け入れようとしますがその思いが露見する前にローリーとエイミーの結婚を知りギリギリ回避。後悔先に立たずですがいよいよ自分は一人だと泣いて覚悟を決め新たに物語を書き始めます。

ベスに書いてと言われた四姉妹の物語です。

ジョーは再び、やはり夢に向かいます。

そんな中ジョーが故郷に帰ったことに驚き衝動のままニューヨークからマサチューセッツのマーチ家にやってきたフレデリックはローリー以外から温かく歓迎されるも当たり障りのない話をして帰っていくのですが…。

 

ジョーから小説を送られた編集者は最初「家族の日常の物語なんて誰が読みたがるんだ」と相手にしない様子でしたが、たまたまその小説を読んだ孫娘たちから「その小説の続きが読みたい!」とせがまれ出版することに。

 

再びニューヨーク。

 

編集者と対峙するジョーはかつてのようにオドオドせず堂々とやり取りします。

しかし編集者も「ヒロインのラストは結婚か死だ」とそこだけは譲りません。

それならば、とジョーはマーチ家を去ったフレデリックをジョーが追いかけ、駅で熱い抱擁をし結ばれるラストを提案。

「いいね、ドラマチックだ!」と喜ぶ編集者に「作家にラストを変えさせたのだから」と原稿料や版権について強気に出るジョー。

 

無事に本(「若草物語」)は出版され、ジョーは昔本を読んであげていたマーチ伯母さん(似た者同士でウマは合うも反発もしていた)から譲り受けた大きなお屋敷を学校とし、家族や愛する人、子どもたちに囲まれて幸せに笑うのでした…。

 

 

 

 

 

という、アレ結局はジョー結婚するのね?なラストでした。

原作がそうなのでまぁそうなるよね、とは思うし独身主義でもこの人ならばと思える人に出会ったなら手のひらクルックルで結婚して全く問題はないと思うのですが、小説のジョーとは違いオルコットは生涯独身であったことと映画のジョーと編集者のやり取りから、時代のしがらみなくオルコットが若草物語を書いていたらまた別の結末を迎えていたのかもと考えたりしますしそう匂わせる2019年版ならではな終わり方だったと思います。

 

とりあえず様々な性の色々な形の幸せがこの作品の「みんなちがって、みんないい」金子みすゞ的キャパシティで定着すればいいなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

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